ボランティア

ベトナムで加茂小学校が開校


【日本語で、カズコ!】
2019年4月8日、ベトナム北部バクザン省の山村で、静岡県浜松キャプテン会の加茂和子キャプテンの加茂小学校(クアントゥルン小学校)の開校式が行われました。
「エルセラーンのみなさまのご支援をずっと忘れません。この学校は、これから『カズコ(和子)小学校』となります」
クアントゥルン小学校のド・ティ・トゥ校長先生(女性)は、開校式のあいさつで、日本語で「カズコ」と発音して、加茂キャプテンやメンバーさんらの支援に対して、心からの謝意を示しました。
雨上がり。ところどころに、水たまりが光っています。
校門には、薄緑色に白抜きの日本語で描かれた「加茂和子小学校開校式」の布地が、はためいていました(写真)。
随所に、おもてなしの心が感じられた「オンリーワン」の開校式。ハイライトを紹介します。

【カム(加茂)オン=ありがとう】
首都ハノイから車で2時間30分。ティエンカン州の州都ティエンカンは開校式の未明、嵐に見舞われていました。
宿泊先のホテルロビーで、出発直前に行われた「出発しまーす」の録画撮り。映像担当の奥谷護さんのリードで撮影に挑んだ加茂さんは、現地のベトナム語で「ありがとう」を意味する「カムオン」を使ってあいさつしました。
「私の名前の『加茂(かも)』は、現地の言葉で『ありがとう』という意味なんだよ、と現地でメンバーさんから教えていただいたんです。カモン、カモン…。『加茂』と『カムオン』をコラボする1日になりました」
アジサイを背にした撮影(写真㊤)から約1時間。途中、山あいを流れる川で、砂利を採取する船などを見やりながら(写真㊦)、バクザン省の小さな村に出来た「カズコ小学校」へ。雨は上がり、太陽が輝き始めていました。

【憧れのプレゼントをいただく日】
嵐で吹き飛んだテントが撤去され、近隣の学校から急遽、借りてきたテントが張られました。
いよいよ開校式。オープニングは、子どもたちの踊り(写真㊤)。続いて式典が始まり、アオザイ姿のすらりとしたスタイルのド・ティ・トゥ校長先生があいさつしました(写真㊦左)。

「新校舎ができて、子どもたちの顔には明るい光が溢れています。教員も、安心して心のこもった授業をすることができます。私たちは、次のことをお約束します。責任をもった指導で、児童の創造性と主体性を発揮できる授業をすること。校舎を効果的に使い、美しく保つこと。ご支援はずっと忘れません」

児童代表のチュン・ティ・ホアンちゃん(5年生、ザオ族)は、民族衣装姿であいさつしました(写真㊦右)

「今日は、とても有意義なうれしい日です。日本のみなさまから、私たちがずっとずっと憧れていたプレゼントをいただく日なのです。新しい学校です!新しい教室です!明るくて、堅固で、とても安全です。もう雨や台風を心配しなくて大丈夫です。私たちは勉強に励み『今日は学校が私たちの誇り、明日は私たちが学校の誇り』を実現するように頑張ることを約束します」

【涙のわけ】
アジア教育友好協会(AEFA)と連携して、学校建設活動に尽力した現地NGO「CSD」代表のグエン・ジエム・アインさん(写真㊤中央)があいさつした時のことです。加茂さん(写真㊦)をはじめ、エルセラーンの一行が、思わず、うるっときた瞬間がありました。

「エルセラーンのみなさまの努力のおかげで、素晴らしい校舎が建設されました。資金をプールするのには、大変なご苦労があったと思います…」

「世界の子どもたちが笑顔になる」ことを目標にして、日々、仕事をしているキャプテンやメンバーのみなさんの琴線に触れる言葉でした。まさか、現地の人々から、遠い日本の仕事への言及があるとは、思ってもいませんでした。
加茂さんは、帰国後、次のように振り返りました。
「開校式を終えて最後にバスに乗るときに、校長先生がお見送りをしてくれて、涙を流されました。思わず、もらい泣きしました。おもてなしがすごくて、申し訳なかったかな、と思ったりしています。村の人々は、お昼の食事をつくってくれました。記念の素敵な時計も、いただきました」
アインさんは、あいさつを次のように結びました。

「エルセラーンのみなさまは、学校のニーズを満たすように工夫しておられます。子どもたちも努力して勉強し、いつか夢を叶えて日本に行ける日が来るかもしれません。またお会いできますように!」

【やさしさ】
開校式が進むにつれて、日差しがきつくなってきました。
すると、エルセラーンの一行のうしろに、一つ、二つ、三つとパラソルが見え始めました(写真㊤)。
暑さから守ろうと、学校のみなさんがパラソルを持って立ってくれたのです。
1986年に建設された旧校舎は、老朽化して危険な状態になりました。そして今、新しい学び舎が…。心が和み、思いやりに包まれた時間が流れていきます。
ふと園庭に目をやると、花びらのまわりをアゲハ蝶が舞っていました。

【先生の作品】
加茂さんは、帰国後、校舎の壁に描かれていた絵が気になっていました。
「かわいい絵がかいてあって…。上手に書いてあるなあ、業者さんが書いたのかなあ。そう思っていたら、先生方が描いた作品だとわかりました。現地では聞く余裕なくて、チームのみなさんから教えていただきました」
同行した西岡ひろ子キャプテンは「ベトナムは、すごく教育レベルが高いなと思いました。先生が若くてきれい。女性のきめ細やかな気配りや、お母さんのようなやさしさ、包容力を感じました。みんながしあわせになれる…そんな時間を共有できる、それが開校式のスタディーツアー。たくさんの人に参加していただければ…心からそう思いました」。

加茂さんは、「日本から桜の枝(造花)をもっていき、子どもたちにプレゼントしました。その時の子どもたちの明るい顔が、一番印象に残っています。メンバーさんに、桜の枝を持っていただいたことも最高の思い出になりました」と話しました。
ベトナムの山深い村で共有した、時間や空間。そこにいた全ての人々の心に、「世界に一つだけの花」が咲いて、まるでドミノ倒しのように涙が広がっていったのでした。


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